このたび筆者は、約3年半の育児休暇を終え、10日後に居宅ケアマネとして仕事復帰をすることになりました。
感覚が鈍っていて仕事に付いていけるだろうか、業務の変化や新しいツールの導入についていけるか、育児と仕事がしっかり両立できるだろうか・・・。
寝る前に「どんな利用者を担当するのだろう」「何件ぐらい担当できそうかな」などいろいろ想像をしては、興奮したり不安になったりする日々。
しかし、ただ考えているだけではもったいない!復帰までに残された10日間で、今できること「学び、情報収集し、準備をする。行動あるのみ!」そう考えて、とにかくケアマネ関連の記事や本を読み、自分が気になったテーマについて掘り下げて勉強することにしました
そこで、今回気になったテーマは「高齢者の低栄養について」
在宅で生活する高齢者の食事課題は多岐にわたります。また栄養状態が悪化する要因も様々です。
日々利用者さんと関わる中で、利用者さんの体重減少や食事量の低下が気になる場面って多くありませんか?そんなとき、ケアマネジャーとしてどのような視点をもって関わり、多職種と連携してくべきでしょうか。
このブログで伝えたいこと
- ケアマネが低栄養に気づけるかがカギ!アセスメントのポイント解説
- 特に栄養管理に配慮が必要な疾患とは?
- ケアマネができる低栄養に対する具体的な対応策は?
ケアマネが低栄養に気づけるかがカギ!アセスメントのポイント解説
低栄養状態は、免疫力低下、筋力低下、認知機能低下など、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。さらに進行すると、転倒や骨折を起こし、動けなくなることで食欲が落ちるといった悪循環に陥ります。ケアマネジャーが利用者の低栄養に早期に気づき、対応することで様々なリスクを予防することが重要といえるでしょう。
食事のアセスメント
①硬いものは食べられますか?
歯はどのくらい残っていますか。歯でしっかり咀嚼できていますか。
入れ歯はあっていますか。繊維質の多い食材も食べられますか。
②最近むせることは多くないですか?
口腔内は乾燥していませんか。唾液の分泌量は十分でしょうか。
飲み込む力が弱くなっていませんか。食事の姿勢は適切ですか。
③栄養バランスの整った食事を必要量食べれていますか
摂取すべきエネルギー量や栄養素はとれていますか、低栄養のリスクはないですか。
疾患管理(塩分やカロリー、その他疾患に応じた制限)はできていますか。
排便コントロールは良好ですか。
④どんな環境で食事をしていますか。
誰が食事を準備していますか。誰とどこで(リビング?寝室?)食事をしていますか。
低栄養の判断基準は体重減少の推移やBMIなどによって評価できますが、ケアマネジャーは各方面から正確な情報を収集し、判断し、適切な支援につなげることが必要です。
特に栄養管理に配慮が必要な疾患とは?
病気の特性上、特に栄養課題が起きやすい方がいます。かなりのエネルギー量を必要とする疾患をお持ちの方です。アセスメントの際に、疾患と栄養を考える視点を持ちましょう。
①COPD(慢性閉そく性肺疾患)
呼吸に多くのエネルギーを消費し、体力や筋力が消耗しやすいです。食事中の呼吸困難により、食事摂取が減ることで低栄養に陥ります。1回の食事であまり量を食べられない場合は、食事回数を増やしたり、間食で栄養のあるものをとることが大切。水分も重要で、水分をとると痰が出やすくなります。ただし、食事中に水分をたくさん取りすぎると、食事がとれなくなってしまうため注意。エネルギー量アップのために、油を上手に利用しましょう。
②間質性肺炎(特発性肺線維症など)
肺が線維化し、徐々に呼吸機能が低下する進行性の疾患。呼吸困難により食欲が低下し、栄養不足が深刻化します。低酸素状態が続くことでエネルギー消費が増大し、低栄養やサルコペニアを引き起こすことも。
一度に多くの量を食べると、横隔膜が圧迫され、呼吸が苦しくなることもあります。こまめに食事をとるなどの工夫が必要です。間質性肺炎の治療では、免疫抑制剤を使用することがあるため、食品衛生に注意し、感染予防を心がけることが重要です。
③がん悪液質
進行がんの患者に多く見られ、腫瘍による代謝亢進や炎症によって体重減少、筋力低下、食欲不振を引き起こします。食べたいときに食べられそうなものを口にするのがいいでしょう。栄養バランスのよい食事が理想ですが、アイスクリームやチョコレート、クラッシュタイプのゼリー、プリンなどでエネルギーを補うだけでもOK。栄養補助食品をうまく活用し、必要な栄養素をできるだけ口から摂るようにしましょう。
④慢性心不全
心臓のポンプ機能が低下し、全身の血流が不足することで代謝異常、筋力量減少、栄養不良が進行します。塩分の摂りすぎ、水分の摂りすぎは心臓に負担をかけるため注意が必要です。
ケアマネができる低栄養に対する具体的な対応策は?
①医療職との連携
医師・歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士などの医療職の視点は欠かせません。口腔内・義歯の状況、皮膚(褥瘡など)状態の観察、体重の推移、疾患管理、薬剤管理など、低栄養の観察・管理ポイントは多数あります。食欲不振・低栄養の原因を正しく評価し、必要な支援につなぐためには、医療職とケアマネとの連携が必須です。そのためには、医療職の視点を理解できるよう、ある程度の栄養管理の知識を身に着けておく必要があるでしょう。
②関係機関との正確な情報共有
医療職から得た情報だけではなく、本人・家族、訪問介護士、デイサービス職員等から聞き取る情報も大変重要です。普段の食事(摂取量・嗜好・食事環境)、食事に対する思いや環境(食器が使いにくい、配食サービスの味が好みでない)、薬の副作用からくる症状の有無、食事姿勢など、利用者さんとその身近にいる人たちから情報を得ましょう。こちらは情報を引き出すテクニックもケアマネには求めらえます。正確な情報を収集し整理し、各関係機関と最新の情報を共有して支援を進めていくようにしましょう。
③評価と再アセスメント
さまざまな方面からの助言を得て、実際の支援につなげます。
具体的には、
・エネルギーが足りなければ、栄養補助食品の活用や食事回数の工夫
・義歯が合わない、かみ合わせが悪ければ、歯科医師へ相談
・薬の副作用による食欲不振であれば、医師へ基礎疾患の治療や処置内容について相談。
・不快な食事環境(匂いや騒音)、孤食(ひとりで食べる)が要因であれば、食事環境の改善、心理的ストレスの軽減
など要因に対し、さまざまな対応策があげられるでしょう。
最後に重要なのは、これらの対応策をとった結果、低栄養状態が改善されているかどうかを評価し、見直し・調整する、ケアマネジメントの基本といえるPDCAサイクルを実践することです。
高齢者の低栄養は、本人の自覚症状がなく、知らず知らずのうちに症状が進んでいることも多いです。定期的なモニタリングにより、早い段階で課題発見につなげることが、ケアマネジャーに求められる役割ではないでしょうか。
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