現役ケアマネが見た共通点と、今日からできる対処法
まゆさんの体験:話しかけた瞬間に拒否された理由
久しぶりに帰省したまゆさん(42歳)は、夕食後に母に話しかけました。

「最近ちょっと心配で、お母さんの老後のこと少し話してもいい?」
返ってきたのは予想外の言葉。

「まだそんな年じゃないから。介護の話とかしたくないわ!」
大阪で仕事と子育てに追われる日々、電話越しに感じる母親の“ちょっとした変化”に不安を抱えていたまゆさん。
- 「心配しているだけなのに、なぜ怒られるの…?」
- 「このまま何もしないのは不安。でも、話すと拒否される…」
でも安心してください。これは 伝え方が悪いわけではありません。
多くの高齢者には尊厳や不安からくる「心理の壁」があり、話がうまく進まないのはそのためです。
なぜ親は介護の話を拒否するのか? 共通する4つの心理

親の言葉の背景には、どんな気持ちがあるのかを理解することから始めよう!
① プライドや羞恥心
- 「自分のことは自分でできる」という自負
- 電話では明るく振る舞い、帰省時には無理して元気な姿を見せようとする
- 背景には「娘に心配をかけたくない」「まだ弱ったと思われたくない」という気持ち
② 介護=人生の終わりと思う不安
- 「施設に入れられるのか」「もう終わりなのか」と結びつけやすい
- 老いや病気の話は「できなくなる未来」を突きつけるため、受け入れにくい
- 拒否や怒りは、防衛反応として自然なもの
③ 子どもに迷惑をかけたくない(自己犠牲)
- 「家庭や仕事があるから迷惑かけたくない」と本心は頼りたくても、涙ぐむ親も多い
- 遠距離の場合、なおさら「来てもらうくらいなら我慢したほうがいい」と思いやすい
④ 知らないことへの不安(介護サービスへの抵抗)
- 訪問介護やデイサービスの内容がイメージできない
- 「どんな人が来るの?」「何をされるの?」という漠然とした不安が拒否につながる
- これまでの生活リズムの変化もストレスに
遠距離ならではの拒否されやすい理由

遠距離だと焦る気持ちは当然。でも遠距離だからこそ、焦らず、ゆっくりと。
- 弱った姿を見せたくない自己防衛
- 久しぶりに会う子どもには元気な自分を見せたい
- 「大丈夫」「まだそんな年じゃない」と強がる
- 帰省時にまとめて話すことで圧倒される
- 薬・転倒・今後の生活など、一気に質問されると防衛反応が出やすい
- 「言っても忘れるでしょ」という思い込み
- 子どもの本気度より、物理的な距離が心理的距離として伝わりやすい
話が拒否される典型パターンと改善ポイント

親と話す前に、拒否パターンと改善ポイントをちょっと意識するだけで、
話が驚くほどスムーズにいくよ!
例1:質問攻めで防衛反応
- NG: 「最近転びやすいって聞いたけど大丈夫?散歩や運動してる?」
- 改善: まず共感
親:「階段でふらっとした」
子:「それはちょっとヒヤっとしたね。疲れてるとバランス崩しやすいよね。階段でふらついたのはどんなとき?」
例2:介護申請の話で一気に拒否
- NG: 「そろそろ介護申請を考えたほうが…」
- 改善: 日常の困りごとから
親:「腰が痛くて…」
子:「お風呂掃除とか買い物の荷物、1人だと大変じゃない?」
例3:迷惑かけたくない気持ちを尊重できない
- NG: 「サービス使ってほしい」
- 改善: サービスは“便利な道具”として伝える
子:「これを使うともっと楽に生活できるよ。私も安心できるし」
今日からできる!親が受け入れやすくなる3つの方法
- 相談ではなく雑談の中で少しだけ話す
- TVやニュースの延長で話題にすると身構えない
- 小さな変化だけ確認(未来の話はしない)
- OK: 「お風呂は疲れやすくなった?」
- NG: 「そろそろ施設を考えたほうが?」
- 行動を促すときは親のメリットを軽い選択肢から示す
- 便利グッズ、試食サービス、家事代行など、ハードルを低く
親が受け入れやすい“前段階のサポート”例

介護認定の申請や、介護保険サービスの利用をするより、
ぐっとハードルが下がって受け入れやすくなるね。
- 介護グッズ: 滑り止めマット・手すり・LEDライト
「夜トイレがラクになるよ」 - 配食サービス: 試食だけ
「最近はいろんな種類があるみたいだよ、一緒に頼んでみよう」 - 家事代行: スポット1回・必要な場所だけ
「台所だけでもやってもらえるみたい」


帰省前・帰省中・帰省後の行動チェックリスト

ここまで一緒に勉強してきたから、もう大丈夫だよ。
さあ、実践してみよう!!
📞帰省前:
🏠帰省中:
📞帰省後:
まとめ
高齢の親が介護や老後の話を拒否するのは、頑固だからではありません。
その背景には、プライドや不安、「迷惑をかけたくない」という親心が複雑に絡んでいます。
そして、あなたは焦る必要はありません。
介護の話題は “一度で結論を出すもの” ではなく、親との新しい関係性をゆっくり育てていくプロセス です。
大切なのは、介護サービスの提案を急ぐことではなく、
- 親がこれからどんな生活を送りたいのか
- 子どもとして、どんな関わり方が心地よいのか
- 親自身が「続けたい」「やりたい」と感じていることは何か
といった 前向きな未来の話を、少しずつ共有していくこと にあります。
そんな対話を積み重ねていけば、親の拒否感はやわらぎ、必要な支援も自然と受け入れやすくなります。

今日できる小さな一歩から、無理のないペースで始めてみてね。

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