
現役ケアマネジャーが解説!
親が要介護になる前にできること
―――後悔しないための5つの準備――――
後悔しないために、準備をしよう
ある日突然、介護が始まるわけではない…
「母が転んで骨折して入院し、退院後に急に介護が必要になったんです」
こうしたご相談は、実は珍しくありません。
でもよく話を聞いてみると―――――

お父さん、最近よくつまずくって言ってたなー。
この前実家に行ったときは、椅子から立つときふらついていたし。

お母さん、先月ぐらいから、外にあまり出かけなくなったな…
食べる量も以前より減った気がする。
…など、小さな変化が以前からあったと話す方が多いのです。介護は“ある日突然”始まったように見えて、実はそのサインはずっと前から日常に潜んでいます。
だからこそ、早めに気づき、準備しておくことが大切です。
親も家族も、穏やかな時間を過ごすために——。
この記事では、「要介護状態になる前に家族ができること」を、5つの視点からお伝えします。
その1:親の‟老い”を受け止める

介護?まだまだそんな年じゃない、大丈夫。

施設とか、そんな縁起でもない話しないでよ。
多くの家族が、親の老いや介護の話題を避けがちです。しかし、老いることは自然なこと。
介護が必要になることは、決して悪いことでも、恥ずかしいことでもありません。
これまで頑張ってきた体や心が、少しずつ助けを必要とすのは、長く生きてきた証でもあります。
私がケアマネジャーとして多くのご家族を見てきて感じるのは、「もっと早く話しておけばよかった」と心の中で感じている方が多いということです。
言葉に出さなくても、「こうなる前にもう少し準備ができていたら…」そんな思いが、会話の端々や表情ににじむことがあります。
ポイント
- 早い段階で「これからどう生きていきたいか」を話す
- 親の人生を尊重する姿勢を示す

親も子も、‟老い”を意識することで、心の準備につながるね
その2:家族で介護について話し合っておく
親の老いや介護の話題は、できれば避けたいもの。
「そんな話をしたら縁起でもない」「まだ早いよ」と言われて、話が止まってしまうこともあるでしょう。
けれど、いざというときは‟話し合う時間がとれない”ことが多いのです。
入院や転倒など、急な変化の中で慌てて決断を迫られるよりも、元気なうちに少しずつ気持ちを共有しておくことが、後の安心につながります。

話し出すタイミングのヒント
介護の話は、改まって切り出すよりも、日常の出来事をきっかけに自然に始めるのがおすすめです。
たとえば…
テレビで介護や医療の話題をみたとき

この番組のエピソードみたいに、もし体が不自由になったら、お父さんはどう過ごしたい?
親しい人の入院や介護の話がでたとき

お母さんは、どんな状態になったら施設に入りたいとか考えている?

他にも、健康診断や誕生日など、節目のタイミングも話しやすいかもね!
話すときのポイント
- 「心配だから」よりも「知っておきたいから」と伝える
- 一度で全部決めようとせず、焦らず少しずつ話す
- 家族みんなで共有し、(兄弟姉妹の)思いのすれ違いを防ぐ
介護の話はネガティブなものではありません。

これからを安心して生きるための会話だと思って、少しずつ言葉にしてみよう!
その3:医療と介護の備えを知っておく
親が元気なうちに、医療や介護の基本的な相談先を知っておくと、突然の入院や体調の変化にも慌てずに落ち着いて対応ができます。
かかりつけ医をもつ
親に信頼できるかかりつけ医はいますか?
健康に関することをなんでも相談でき、必要時は専門医療機関への紹介もしてくれます。

ふだんの様子、健康状態、持病、服薬状況をご家族と共有しておくことが、いざというときの対応がスムーズに行えます。
持病や服薬の情報を整理する
- お薬手帳や診療記録をまとめておく

相談窓口を知っておく
- 日常生活に関する相談:地域包括支援センター
- 入退院や医療調整:病院の医療ソーシャルワーカー

相談先を把握するだけでも、急な状況で慌てずに対応できるね!
その4:誰が介護を担うかを考える
介護が必要になったとき、誰がどのように関わるかを家族で話し合っておくことは、とても大切です。
突然状況が変わると、家族が戸惑ったり、負担が偏ったりしやすいためです。
家族の役割をざっくり考える
- 同居家族:日常生活のサポートや通院はどこまで担えるか
- 別居家族:訪問のタイミングや、連絡方法を決めておく
- 自分の負担:介護する家族自身がどこまで関われるか、関わりたいかも考える (仕事や自分の家族、育児などの状況をふまえる、数年後のライフスタイルや体力も想定しておく、など)
外部サービスも視野に入れる

デイサービスや訪問介護など、外部サービスを組み合わせたら、私も仕事と無理なく両立できそう。

自分たちだけで抱え込まず、頼れるものは頼ることが大切だね。
ポイント
介護を誰が担うかは、最初から細かく決めなくて大丈夫です。まずは「家族の中でどんな関わりができそうか」をざっくり話しておきましょう。
将来の生活や体力、仕事・育児の状況も考えて、無理のない範囲で関わることが大切です。
状況に応じて柔軟に変更していく余地を残しておきましょう。
その5:親の暮らしを見直す
親が元気なうちに、暮らしの環境を見直すことも大切です。
家具や家の段差、キッチンや浴室の使いやすさなど、ちょっとした工夫で安全性や快適さがぐっと上がります。

生活環境のチェックポイント
- 段差や滑りやすい場所:転倒予防のために手すりや滑り止めを検討
- 家具の配置:通路を広くして移動しやすく。または伝い歩きがしやすいよう家具をセッティング。
- 照明:夜間に暗くならないように調整、足元灯の取り付け
- 収納や家具動線:無理なく日常生活ができるか
地域とのつながりも大切に
- 親が元気なうちから、地域の集まりや趣味の会などに参加して人とのつながりを作る
- 地域の情報を知ることができ、介護が必要なのは自分だけじゃないことを感じられる
- 人と関わることは、心身の健康にもつながり、介護予防にも役立つ

元気なうちから、社会とのつながりをつくっておくことって重要だね!
暮らしの工夫は「今からでもできる準備」
- 大きなリフォームを一度に行うと、慣れない環境で混乱や転倒のリスクが増える場合があります。
- 手すりの設置や家具配置の見直しなど、小さな改善を少しずつ進めることで、安全性と快適さを確保できます。
- 親と一緒に話しながら、段階的に暮らしを整えていくことが大切です。
ポイント
- 暮らしの見直しは、親と一緒に話しながら少しずつ進めるのが理想
- 安全性だけでなく、親が快適に、楽しく過ごせることも大切にする
- 大きな変更より、段階的な工夫で安心・快適な暮らしを作る
- 地域とのつながりも意識して、心身の健康や介護予防につなげる
まとめ:介護が必要になる前にできること
親が元気なうちにできる準備は、大げさなものではありません。
- 親の老いを受け止める
- 家族で話し合う
- 医療や相談窓口を知る
- 誰が介護を担うのかを考える
- 暮らしの環境を整える、地域とのつながりを作る

大切なのは、一度にすべてを完璧にしようとしないこと。
焦らず、でも今からできることから始めよう!
親と一緒に少しずつ話しながら、できることから準備していくことで、安心して老後を迎えられる環境が整います。

今日仕事終わりに、お父さんに電話でもしてみようかな。

今週末実家に行って、親と夕飯食べながら話してみようかな。
この記事が、親と話すきっかけや、暮らしを整えるきっかけになれば嬉しいです。

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