親の介護が嫌だと言っていい、逃げたい気持ちのままできる「介護の始め方」

今は、考えたくない

仕事や子育てで手一杯の中、
ふと、離れて暮らす親の年齢や病気が気になり始める。

「普段仕事をして、家事もして、子どももいて・・・
そのうえ、親の介護まで、私が引き受けなきゃいけないの?」

でも親の介護のことを考えると、気持ちが重くなる。
できれば考えたくない、
正直、介護はしたくない。

その間で揺れながら、
夜、スマホで「親 介護 まだ大丈夫?」と検索しては、
情報を読んで苦しくなり、画面を閉じてしまうことはありませんか。

そう思うのは、あなたが冷たいからでも、逃げているからでもありません。

私は2009年から介護の現場で働き、
介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャーの資格を取得しました。
現在も現役でケアマネジャーとして働き、2児の母でもあります。

そんな立場から、この記事では、

  • 「介護が嫌だ」と思っている、自分の気持ちとの向き合い方
  • 今すぐには動かなくてもいい理由
  • 最低限、知っておくだけで楽になる全体像

を、分かりやすくお伝えします。

ここにたどり着いたあなたは、もう十分考えています。
この記事を読み終える頃には、
「今はここまででいい」と思えるはずです。

第1章:なぜ介護は、こんなにも重たく感じるのか

介護と聞くと、
「大変そう」「つらそう」「自分には無理かもしれない」
そんなイメージを抱く人は少なくありません。

その感覚は、決して気のせいでも、弱さでもありません。
介護が重たく感じるのには、実ははっきりとした理由があります。

それは、介護が「少し手を貸す」「困ったときだけ支える」、
といったレベルの話ではないからです。


① 介護は「生活そのもの」を変えてしまうから

介護は、
「時間を少し割けば何とかなる」
というものではありません。

少しずつ、でも確実に、こんなものに影響していきます。

  • 生活リズム
  • 家族の役割分担
  • お金の使い方
  • 心の余白

通院の付き添い、連絡対応、書類手続き。
最初は小さな用事のように感じても、
気づかないうちに、自分の生活の輪郭そのものがじわじわと変わっていきます。

「この先、自分の時間はどうなるんだろう」
「仕事は続けられるのかな」
「家族との関係は変わらないだろうか」

そんなふうに想像して、
「怖い」「嫌だ」と感じるのは、とても自然な反応です。

それは、わがままでも冷たい気持ちでもありません。
自分の人生を守ろうとする、本能的な感覚なのだと思います。


📒ケアマネとして見てきた、たくさんの現実

私はケアマネジャーとして、
介護を担うご家族をたくさん見てきました。

実際に現場では、
「最初から覚悟が決まっていた家族」は、ほとんどいません。

多くの人が、
「まだ大丈夫だと思っていた」
「ここまで生活が変わるとは思わなかった」
と話します。

  • 仕事を休まざるを得なくなった人
  • 一時的に家族と離れ、実家に戻って介護をする人
  • 「こんなはずじゃなかった」と戸惑いながらも、必死に踏ん張っている人

介護の始まり方は、本当に十人十色です。

ある日突然、倒れて始まることもあれば、
「ちょっとした手助け」から、
いつの間にか負担が大きくなっていくこともあります。

だからこそ、介護を前にして重たさを感じるのは、
先を見通せない不安があるからでもあるのです。


② 今の生活には、すでに守るべきものがある

少し前までは、
「子どもが独立してから親の介護」
という人生の流れが、まだ成り立っていました。

でも今は違います。

  • 子育ての真っ最中
  • 共働きが当たり前
  • 一度仕事を辞めたら、簡単には戻れない社会

そんな状況で、
「介護も当然に引き受けて」と言われること自体に、
構造的な無理があります。

今の生活には、すでに――
守るべきものが、たくさんあるからです。

子どもの成長
築いてきた仕事
ようやく回り始めた生活のリズム

それらを抱えたまま介護を背負うのは、
気合いや覚悟だけで乗り越えられる話ではありません。

だから、介護を「嫌だ」「重たい」「できれば避けたい」
と感じるのは、時代に逆らっているからではありません。

今の現実を、ちゃんと見ている証拠です。


③終わりが見えない不安

介護のつらさは、「重労働だから、大変だから」だけではありません。

終わりが見えないことが、心をすり減らしていきます。

介護が終わるということは、親の死を意識することにもつながります。

だからこそ、

  • いつまで続くんだろう
  • これかもっと大変になっていくのかな

そんな不安を抱えながら、日々を過ごしている人も少なくありません。

そして同時に、長く続く介護生活に疲弊しながらも、
「これが終わることを、どこかで望んでいる」
そんなふうに思ってしまう自分に、強い葛藤や罪悪感を抱いてしまう。

この矛盾した気持ちこそが、
介護をより重たく感じさせる原因のひとつです。

④「ちゃんとできないかもしれない」という恐れ

介護が嫌なのは、
親を大切に思っていないからではありません。

  • 怒ってしまいそう
  • 投げ出してしまいそう
  • 優しくできない自分を見るのが怖い

そんな不安が、心の奥にあるからです。

実はこれは、
責任感が強い人ほど抱きやすい恐れでもあります。

「できなかったらどうしよう」と考えられる人ほど、
介護を簡単に引き受けられなくなる。

それは、いい加減だからではなく、
ちゃんと向き合おうとしている証拠です。


⑤ 嫌だと言えない社会が、苦手感を増幅させている

「親なんだから」
「家族なんだから」

この言葉が、あまりにも当たり前に使われる社会では、
介護に対する本音は、なかなか外に出せません。

その結果、多くの人は、
「嫌だと思っている自分」そのものを否定してしまいます。

本当は感情の問題なのに。
状況への戸惑いや不安なのに。

それを、
「自分は冷たい人間なんじゃないか」
「親不孝なんじゃないか」
と、人格の問題だと思い込んでしまう。

また、そう感じてしまう背景には、
家族を取り巻く環境の変化もあります。

一人っ子世帯が増え
介護を担う「候補」そのものが、
昔よりも少なくなっています。

近所づきあいや親族との関係も希薄になり
困ったときに自然と手が伸びてくる相手が、
見えにくくなっている。

その結果、
「自分がやるしかない」
「逃げ場がない」
と感じやすい構造ができています。

そうして、介護そのものが、
より重たく、より暗いものに感じられていくのです。

でも――
嫌だからといって、何もできないわけではありません。

嫌だと思いながらでも、関われる方法はあります。
距離の取り方も、関わり方も、人それぞれです。

ケアマネ
ケアマネ

介護に、正解はありません。

「全部を背負う」だけが、
家族としての関わり方ではないのです。

第2章:「嫌だ」と思ったまま、関わる方法

介護に向き合うとき、
まず知っておいてほしいことがあります。

介護は、0か100かの世界ではありません。


① 介護は「全部やらない」が前提でいい

介護というと、
「同居する」「毎日世話をする」
そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。

  • 直接の介助はしない
  • 連絡役だけを担う
  • 情報収集だけする

これもすべて、立派な関わり方です。

できる範囲をあらかじめ決めることは、
冷たさではなく、長く関わるための知恵

無理を前提にしないことが、
結果的に親との関係も、自分の生活も守ります。



② 「全部やらない」でいい理由|今は“頼れる前提”の時代

今の介護は、家族だけで抱え込む時代ではありません。

  • 仕事と介護を両立する人
  • 育児と介護を同時に担う人
  • ひとりっこで負担が集中しやすい人

そんな背景が当たり前になった今、
社会の側も「家族だけに任せない仕組み」を整えてきました。

介護保険サービス
自治体の支援
保険外サービス
便利な見守りグッズ
専門職や関係機関

すでに、地域で高齢者の生活を支えるネットワークがあります。

あなたは、そのすべてを背負う必要はありません。
「自分の生活を最優先にしながら、
どの部分に関われるか」を考えるだけで十分です。

現場では、
「こんなに最初から頼ってもよかったんですね」
「もっと早く相談して、サービス使えばよかったです」
と、ほっとした表情を見せる家族も多くいます。

介護保険や地域の支援は、
困り切ってから使うものではなく、
生活を壊さないために使うものだと、私は感じています。


「介護」という言葉から、
身の回りの世話や負担を想像する人も多いですが、
実は、もっと手前の関わり方もあります。

離れて暮らしていても、
親の“できる”を保つためにできること。
介護を始める前だからこそ意味のある関わり方を、
別の記事でまとめています。

③ 感情と行動は、分けて考えていい

  • 親の介護は正直、嫌だ
  • できるだけ時間は取られたくない

そう思っていても構いません。

それでも、

  • 必要な手続きをする
  • 情報だけは集める

この2つは、同時に成立します。

愛情があるから前向きになる必要はありません。
気持ちが追いつかなくても、行動だけ選べばいい。

今は「覚悟」を決める段階ではなく、
余白をつくる段階です。

④ 早めに「限界がある」と言葉にする

限界を迎えてから助けを求めると、

  • 罪悪感
  • 怒り
  • 家族関係のこじれ

が一気に噴き出してしまいます。

だからこそ、

「全部はできない」
「ここまでならできる」

を、元気なうちに言葉にすることが大切です。

これはわがままではありません。
結果的に、家族全体を守る選択です。

ケアマネ
ケアマネ

「介護が嫌だ」と思えるのは、
ちゃんと先の生活を想像しているから。
自分の人生を大切にしようとしている証拠です。

だから今は、無理に覚悟を決めなくて大丈夫。

大切なのは、
“いつか困ったときに、すぐ動ける状態”をつくっておくこと。

次の章では、
介護を引き受ける覚悟がなくてもできる
「最低限これだけ知っておけばいい準備」を整理します。


第3章:介護の話をしなくても、できる準備

じゃあ、今この段階で、私はどうすればいいの?
何もしなくていいの?

そんな疑問がよぎったあなたへ。
何も考えなくていい、という意味ではありません。

「困ったときに動ける余白」を残しておくこと。
それが、今できる一番の準備です。

たとえば、「今すぐ何かを始める」のではなく、
“気づく視点”を持っておくだけでも、準備になります。

帰省したときや、久しぶりに親の家を訪ねたときに、
「これは気にしておいたほうがいいかも」と感じやすいポイントを、
別の記事でまとめています。

この章では、
今すぐ動かなくてもいい。
でも、知っておくと心が少し楽になること
をお伝えします。


① 親の変化は「探さなくていい」

帰省したときや、たまにかける電話で、
「ちゃんとお薬飲めてる?」「最近こけたりしてない?」など、
無理に親の変化を探そうとしなくて大丈夫です。

今は、
「気づけるポイントがある」ことを知っているだけで十分。

チェックするように見なくていい。
気づこうと構えなくていい。

もし、
「あれ?」
「ちょっと違和感があるな」
と感じることがあれば、
そのときが“動き始めるタイミング”です。

今は、「気づいたら動けばいい」
それだけ覚えておいてください。


② 親や家族と「普段の話」をしておく

介護の話をしなくても、
準備になることはあります。

それは、普段の会話を大切にすること

たとえば、

  • 親は今、生活の中で何を大切にしていそうか
  • これからの暮らしで、不安に感じていることはあるか
  • きょうだいは、親の変化をどう感じていそうか
  • きょうだいは、どこまで関わりたいと思っていそうか

答えを出す必要はありません。
決めなくていい。

「そういう考えなんだな」と
知っておくだけで、いざというときの動き方が変わります。


③ 専門職に“丸投げしていい部分がある”と知っておく

介護は、家族の愛情だけで解決できる問題ではありません。

だからこそ、

  • 介護保険
  • 地域包括支援センター
  • ケアマネジャー

という仕組みがあります。

これらは、「冷たい人のための制度」ではなく、
家族が潰れないための仕組みです。

今すぐ使わなくていい。
相談しなくてもいい。

ただ、

「こういうところがある」
「困ったら、頼っていい」

そう知っているだけで、
心の負担は確実に軽くなります。


まとめ|今は「背負わなくていい」、でも「目を閉じなくていい」

親の介護を考えると、
重たくて、怖くて、できれば避けたい。
そう思うのは、自然なことです。

介護は、
善意や気合いで乗り切れるものではなく、
生活そのものを揺らす出来事だから。

だから今は、

  • 覚悟を決めなくていい
  • 介護の話を無理にしなくていい

そして、

  • 「嫌だと思っていい」
  • 「全部はできないと決めていい」
  • 「頼れる仕組みがあると知っておく」

それだけで十分です。

介護は、
「引き受けるか・逃げるか」の二択ではありません。

あなたの人生を守りながら、
できる形で関わる道は、必ずあります。

このブログは、
その選択肢を一緒に増やしていく場所です。

ケアマネとして、多くの家族から相談を受けてきて、
いつも思うことがあります。

それは、介護の問題そのものよりも、
「一人で抱え込もうとしていること」が、
人をいちばん追い詰めている
ということです。

うまくやり方が分からないから苦しいのではなく、
一人で考え続けてしまうから、しんどくなる。

だから私は、
「正解を出す人」でいなくていいと思っています。

ケアマネでなくてもいいので、
一緒に考え、
一緒に迷い、
一緒に「今より少し楽な道」を探してくれる、
誰か1人を探しましょう。

ケアマネ
ケアマネ

あなたには、伴奏者が必要です。

迷いながら、嫌だと思いながら、
それでも少しずつ関わり方を見つけていく。
そのプロセスに、価値があります。

一人で背負わないこと。
それが、後悔しない介護を続けるための、いちばん大切な準備だと
私は感じています。


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