〜できなくなったことより、“今できていること”に目を向けて〜

久しぶりに母に電話をかけたとき、
「最近バスが怖くて…あまり外出しなくなった」と言われ、
胸がざわつきました。
この記事の主人公は、
大阪在住・42歳・共働きで小中学生の子供を育てる”まゆさん”。
遠く離れて暮らす親の変化に、
「そろそろ、うちも介護かも?」と不安が募ります。
「以前はもっとしっかり歩けていたのに」
「一人でいろんなところに出かけていたのに」
離れて暮らしているほど、以前とのギャップは大きく感じますよね。
でも、焦らなくて大丈夫。
介護の始まりは、
“できない”を数えることではなく、“まだできる”を見つけることから始まります。

この記事では、
遠距離で親を気にかける人へ向けて、
“親のできる力を支える5つの実践法”を分かりやすく紹介します。
この記事を読み終えるころには、
「まだ間に合う」「今できることがある」と前向きな一歩を踏み出せます。
①まだできることを見つけよう|介護予防は”気づき”から始まる
離れて暮らす親の変化に気づくと、
どうしても「できなくなったこと」ばかりが目に入ります。
料理の味が変わった。
外出の回数が減った。
以前より動きがゆっくりになった——。
そのたびに、
「もう無理かもしれない」
「何か始めたほうがいいのでは」
と、不安が膨らみがちです。

でも、介護予防のスタートは
“衰えに気づくこと”ではありません。
大切なのは、
今も続いている行動に目を向けること。
「できない」ばかりに注目すると、
本人の自信も、家族の関係も、少しずつ硬くなってしまいます。
🟢たとえば…(今もできていること)
- まだ一人で食事の支度をしている
- 週に一度は友人と出かけている
- 毎朝、新聞やテレビのニュースを欠かさない
- 電話で家族と近況を話せている
- 自分なりに工夫しながら生活を続けている
👉 これらはすべて、介護予防の大切な土台です。
🟡関わり方のコツ|見方を変える
- 料理の味つけが変わっても
👉「今日も自分で作れたね」と伝える - 買い物が負担になっても
👉「工夫しながら暮らしている力」に目を向ける - 以前と同じでなくても
👉「続けていること」を言葉にする
評価や指摘より、
気づいた“できる”をそのまま伝えることがポイントです。

最近、母の料理の味が薄くなった気がして…。
それがすごく気になるんです。
👉 味が変わっても、
“今日も自分で台所に立った”事実は変わりません。
💬実例
以前担当した81歳の女性も、
外出は減っていましたが、
趣味の詩吟だけは大切に続けていました。
その時間を肯定したことで、
地域の教室に参加するようになり、
自然と外出への不安が和らいでいきました。
👉誰でも年齢を重ねても、“できること”を続けたい気持ちを持っています。
“できない”に目を向けるより、
“まだできる”を見つけて言葉にすること。
それが、離れていてもできる介護予防の第一歩です。
②家の中がジムになる|親の介護予防に効く“生活リハビリ”のすすめ
「運動しなさい」と言われても続かない——
それは意志が弱いからではありません。
毎朝10分間ウォーキングをしよう、
1日10回スクワットをしよう、
こうして決めても続かないのは、
運動が生活の外に置かれているからです。
介護予防で大切なのは、
運動のための運動ではなく、
生活そのものをリハビリに変える視点。
難しい体操を増やすより、
「日常動作を、意識して続ける」ことの方が、
体力・バランス・生活意欲を守る力になります。
🟢たとえば…(家の中でできる“生活リハビリ”)
① 家事・外出を「運動」として活かす
- 買い物はまとめ買いではなく、少量を複数回に分ける
- 低すぎない位置に収納し、しゃがむ・立つ動作を残す
②毎日の習慣に組み込む
- 夕食前にテーブルを拭くのを日課にする
- ゴミ箱を各部屋に置かず、1か所にまとめる
③やりすぎない支援を選ぶ
- 掃除は水回りだけ外注し、居室は本人に任せる
- 配食サービスは「毎日」ではなく、週2・3回にする
👉 「楽にする」より、「動く理由を残す」ことがポイントです。

母の負担が減るかなと思って、便利な家電を増やすほど、
母の動きが減ってる気がします…
👉 実はこれ、ケアマネの現場でもとてもよくあるケースです。
「楽になる=良いこと」と思って整えた環境が、
結果的に“動く理由”を減らしてしまうことがあります。
🟡関わり方のコツ|あえて不便にする

介護予防では、
“便利さを手放す”ことがリハビリになる場面もあります。
たとえば、
- 少し遠いスーパーをあえて選ぶ
- よく使う物を「立ち上がって取りに行く場所」に置く
こうした小さな工夫で、
無理なく活動量を増やすことができます。
「手伝うこと」よりも、
「続けられる形を一緒に考えること」。
家の中をジムに変える視点が、
離れて暮らす親の“できる”を守ります。
③孤立を防ぐ“つなぐリハビリ”|地域と趣味を味方に
離れて暮らす親について、
「最近、人とあまり話していないかも」
「外出の機会が減っている気がする」
そんな変化に、不安を感じることはありませんか。
身体の衰えは目に見えますが、
“人とのつながりの減少”は、気づきにくいものです。

介護予防というと、
体力や運動ばかりに目が向きがちですが、
心の元気を守ることも同じくらい重要です。
人との関わりは、
生活意欲・認知機能・気分の安定に大きく影響します。
家族だけで抱え込まず、
地域・友人・趣味の力を借りることも、立派な介護予防です。
🟢たとえば…(つながりを保つ工夫)
- 趣味サークルや地域サロンへの参加
- 民生委員・自治会・ボランティアとの関わり
- オンラインでの同世代との交流
- 習いごとや講座など「目的のある集まり」
👉 「友達を作る」より、「役割や楽しみを持つ」場を意識します。
🟡関わり方のコツ|つなぎ方を変える
- 無理に誘うより
👉「好きだったこと」から広げる - 新しい人間関係を勧めるより
👉「今ある関係」を細く長く続ける - 家族が代わりに探すことで
👉“最初の一歩”のハードルを下げる
「行けば楽しい」よりも、
「これなら行けそう」が大切です。

母に“友達を作ってね”って言うと、
”この年になって友達なんて…”と嫌がるんです。
👉無理に友達をつくろうとせず、
“好きなことを通じてつながる”が自然です。
💬実例
以前担当していた男性(70代)。外出を嫌がるようになりましたが、家で料理をすることが楽しみの一つでした。地域の「男の料理教室」に参加し始めたことで、笑顔が増え、血圧も安定。
娘さんが情報を調べて「お父さんに合いそう」とすすめたとのことでした。
介護予防に必要なのは、
支援する人を増やすことではなく、
“つながりが続く形”を見つけること。
離れていても、
親の「好き」を起点に、
地域とつなぐサポートはできます。
④介護保険外のサポートで“自立を守る”|程よい距離感づくり
「まだ元気そうだけど、本当に大丈夫かな」
「介護保険を使うほどではないけど、何かあったら心配」
そんなはざまの不安を感じることはありませんか。
でも、だからといって
すべて家族が背負う必要はありません。

介護予防のポイントは、
“できなくなってから支える”のではなく、
“できるうちに支え方を整える”こと。
介護認定を受けていなくても使える
介護保険外サービスは、
「頼る=負け」ではなく、
自立を守るための道具です。
🟢たとえば…(利用しやすい介護保険外サービス)


- 安否確認つき配食サービス
- 家事代行・買い物代行
- 民間の送迎や付き添い
- 見守りセンサーやスマートスピーカー
👉 「全部やってもらう」のではなく、
「足りないところだけ補う」のがコツです。
🟡関わり方のコツ|距離感を保つ使い方
- 家族が毎回確認する代わりに
👉 見守りサービスを“目”として使う - できる家事は残し
👉 体力を使う部分だけ外注する - 不安を理由に先回りせず
👉 本人の「選ぶ力」を尊重する
手を出しすぎないことも、立派な支援です。

介護保険を使うほどではない気がして、
誰にも頼らずにいます。でも正直、不安です。
👉 その段階こそ、
介護保険外サービスがいちばん活きる時期です。
💬実例
以前、見守りセンサーを導入したご家庭がありました。
本人の生活は、導入前とほとんど変わっていません。
ただ、
子どもは離れていても
室内環境や生活リズムを把握できるようになり、
「何かあったら気づける」という安心感が生まれました。
その結果、
心配から何度もかけていた電話は自然と減り、
本人も
「見張られている感じがしなくて気が楽」
と話されていました。
娘さんからは、
「確認のための電話ではなく、
最近の出来事など別の話題で会話ができるようになった」
と喜びの声もありました。
⑤声かけが“心のリハビリ”になる|親の自信を育てる
離れて暮らしていると、
電話やLINEのたびに
「体は大丈夫?」
「無理してない?」
そんな言葉ばかり、かけていませんか。
心配する気持ちは自然ですが、
それが続くと、
親は“できていない自分”ばかり意識するようになります。

介護予防で、
いちばん身近で、いちばん力になるのが“声かけ”です。
「まだできるね」
「今日もありがとう」
その一言が、
“明日もやってみよう”という気持ちを育てます。
声かけは、
身体ではなく、心のリハビリでもあります。
🟢たとえば…遠距離でもできる関わり方
- 孫の写真や動画を送り、会話のきっかけにする
- 週に1回の電話で「今週のいいこと」を聞く
- 「お母さん(お父さん)の声が聞けただけで安心」と伝える
- LINEで「今日も散歩行ったよ」と報告してもらう
👉 体調確認だけで終わらせないのがポイントです。
🟡関わり方のコツ|“心配”から“信頼”へ
- 「大丈夫?」を繰り返す代わりに
👉「最近どんなことが楽しかった?」と聞く - できていない点より
👉「続けていること」に目を向ける - 励まそうとせず
👉 そのまま認める言葉を使う
心配より、信頼を伝える声かけが、
親の自信を支えます。

電話のたびに“体は大丈夫?”って聞いちゃって…
それしか、思いつかないんです。
👉 それだけ大切に思っている証拠です。
でも、そこに
“できていることへの関心”を少し足すだけで、
会話の空気は変わります。
🟦まとめ|“今の親”を尊重することが、最大の介護予防
老いていく親を前にすると、悲しさや不安が押し寄せます。
でも、受け止めることは、諦めることではありません。
それは、「今の親を尊重し、これからの生き方を応援する」という選択です。
できなくなったことより、「まだできること」に光を当てて、
あなたとご両親の”これから”を一緒に育てていきましょう。

今日の電話で、“最近どんな時間が楽しい?”と聞いてみましょう。
その答えが、親の“できる力”を支える第一歩になります。


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